祝日が妙に2日挟まった今週。気持ちの面でも状況の面でも仕事にも何にも身が入らず、不完全燃料のまま燻り続けた一週間であった。3連休の中日には山に行くなど連休らしいイベントもあったものの、人間の精神とはままならないもので、天候の清々しさに反して心のうちは泥沼である。何故こうなるか。

まほやくとうどんは完全な習慣になった。

ヒューマンウォッチング

連休の中日、日曜日に山へ行った。登山ではない。頂上のほんの手前に大きな駐車場のある山で、小一時間、石灰岩のごろごろ転がるひらけた道を歩いて登頂という、サンダルでもブーツでも可能な山である。高速を降りた時点で渋滞激しく、こんなところの車なんぞ目的地は同じだろうということで登る前からよそうかとどうしようかと迷ったほど。山頂にはずいぶん雲がかかっていて、眺望には期待できなさそうでもあった。

駐車場に着くと、霧が立ち込めている。同じくらい人もいる。もうすごい人である。そして子どもが多い。多すぎる。かつ、普段静かな地域で引き篭もっている人間には中々刺激的なdB。いや、もちろんわかる。このご時世、レジャーにも中々連れて行ってもらえず、貴重な機会だろうと思うよ。そりゃもう、テンションも爆上がりでしょう。大きな声も出したくなるし、勢い余って悲鳴真毅の奇声にもなるよな。うんうん。うん。

気まぐれに食べたソフトで順当にお腹の具合を悪くしつつ、ダラダラ登って頂上へ。上った側は雲の下で何にも見えないが、反対側は適度に雲が晴れて山間の集落が見えた。よかったよかった。人の多さにとてもじゃないが山小屋で食事というわけにも行かず、コンビニのおにぎりにパウチのゼリーで遅めの昼食。後はもう、静かに石のように座って眼下の山道を行き交う人々の観察をするのみ。やれあのグループはこういう家族構成だ、こんな関係性だのと好き勝手にラベルを付けて遊ぶ。これだけの人を見るのも久しぶりなので、これはこれでとても楽しかった。通勤で外に出る機会はあれど、道中意識が殆どないし気持ち的にも人間観察どころではないので。

途中、うつらうつらとしつつも数時間経って、日暮れの頃には随分人も減り子どもの声もしなくなった。風は強いし、すっきり雲が取れて視界良好とはならなかったものの、十分赤い夕陽を見た。朝日かと思うほど光が強くてとてもずっと見てはいられず、度々日陰に入らざるを得なかった。

日が暮れ始める前、山小屋で調理の仕事をしていたのだろう荷物を背負ったお婆さんがひとり、夕陽待ちの客を尻目に一足先に帰っていった。背中もすっかり丸まった、頬かむりをしたザ・お婆さんである。両手に杖を持って、かん、かん、ざっ、ざっ、ざっ。かん、かん、ざっ、ざっ、ざっ。と見事に一定のテンポでゆっくり着実に下っていく。かん、かん、ざっ、ざっ、ざっ。かん、かん、ざっ、ざっ、ざっ。その背中はその場の誰よりもストイックだった。

日も沈み、さて帰ろうかという頃に鹿が鳴き始めた。帰る道すがら、目をあげる度に稜線の向こうから鹿がこちらを見張っている。一頭ではなく、何頭もいる。さっさと帰れと言わんばかりの視線を背に、薄明の下の植物や景色を撮りつつ、行きと同じくらいダラダラと下った。

のんびりしすぎたか、サービスエリアで夕食をと降りたもののラストオーダーを10分過ぎていたようで門前払いをくらい、帰宅後に冷凍食品を食べるなど。

片付け

部屋が汚い。ギリギリ床の上に物はないが、棚の上、机の上が気づけばえらいことになっている。読みかけの本が何冊も平積みになり、その下にはすっかり開かなくなった参考書が潰れている。畳んだ後、すぐに引き出しにしまえばいいのに、ものぐさから箪笥の上に置きっぱなしの洗濯物が3回分山になっている。

ここまでは、まぁ情けなくもいつものことだけども、いつもよりも汚く思うのは文庫本のせいである。正確には、カバーと中身がバラバラになった文庫本のせいである。

なぜそんなことになるかというと、夜が冷え始めたからだ。風が吹けば桶屋が儲かるレベルの雑な説明をいいわけがましく分解する。

家では普段、入浴といえばシャワーだけを指す。湯船に湯は張らないのだ。しかし最近は夜は随分冷えるようになり、湯を張るようになった。自分は家の中で序列が最下位なので、入浴の並びももちろん最後である。となると、長風呂になっても誰にも文句を言われない。ただ湯に浸かるのも暇なので何か持ち込みたい。文庫本なら、畳んだタオルに挟めば濡らさずに持ち込める。そうなるとカバーが邪魔になるので外す。外したカバーは適当な場所にぽんと置く。風呂上りは何かとすることが多い。部屋に持ち帰った本は適当に机の上か棚の上に放置する。就寝準備をはじめる頃にはそのことをすっかり忘れる。ロフトに上がった後にふと思い出すものの、降りるのも面倒でそのまま寝る。朝はギリギリまで寝るせいで時間がない。バタバタと朝の支度を済ませ、さぁ仕事だと机に向かう。裸の文庫本がそこにある。邪魔である。見渡すとカバーは立ち上がって1、2歩先の棚の上にある。面倒くさい。とりあえず机の隅に積む。時は過ぎて入浴のタイミング、今日は何を読もうかと別の本を選ぶ。以下同。

書いていて、我ながら酷いと思う。こんな状態でさらに郵便物やら小物やらが挟まって、もう地層の域に到達しようとしている。これから片づけます。